2017年1月25日水曜日

お手伝いをした時の、苦い思い出

10年程前、ある会社の商品開発のお手伝いをしたことがあります。

その会社は県内では大手の電子機器メーカ。
パソコンの周辺機器の分野で、有名なブランドを持っています。

その周辺機器は大変な人気で、
1ヶ月の利益は1億円を超え、
その利益で向上とは別な場所に、研究部署が入るビルを作り、
優秀な人財を集めていました。

しかし、パソコンの分野はトレンドのサイクルが短く、
今人気がある商品も、すでに”寿命”が見えていました。

そこで、彼らは手持ちの技術を使って
別の商品の開発を進めます。
その一つがドライブレコーダーでした。

当時、ドライブレコーダーは、
数年後、一気に普及が進むと予想が出ていました。
市場規模は何千億円とも言われていました。

縮小傾向にある今の商品から、
拡大する商品分野に向かう

これは、当然の選択です。
彼らはメーカですから、”工場のラインを稼働する”という責任もあります。
たくさんの台数が売れるものを開発しなければなりません。

そこで、当時、ホームページでドライブレコーダーのことを紹介していた、
私に声をかけ、製品化について意見を求められました。

開発は非常に順調でした。

もともと、技術力の高い彼らにとって、
カメラとメモリーカードの組み合わせであるドライブレコーダーは
難易度が低かったと思います。

市場動向もよく見ていました。
他社製品を取り寄せて、商品の特徴やくせを研究していました。
他社の動向を見て、自社の商品のコンセプトを固めていきました。

そして、製品ができあがり、市場にリリースしました。
最初に県内のタクシー組合と納入契約を結ぶことができ、
さい先のよいスタートを切ります。

私も、代理店契約を結び、
取引先に納入を開始しました。
最初はソフトウェアの設定に難がありましたが、
それも、ヴァージョンを上げていくことで徐々によくなっていきました。
取引先からの評価も高く、関連会社にも納入契約を結ぶことができました。

しかし、残念ながら勢いはここまで。
あとは、商談になっても受注にいたることはほとんどなくなりました。
メーカも販売代理店をいくつか作りましたが、
期待していたほど、受注を増やすことができません。

その後、リーマンショックによって、メーカの業績が低迷。
ドライブレコーダーは次期製品の開発予定もありましたが、それも中止となり
その数年後、ドライブレコーダーからは撤退することになりました。

現在は、修理だけを対応している状況です。

ちなみに、現在、ドライブレコーダーの市場は普及期に入っています。
パナソニックやパイオニアなどのメジャーブランドを押さえて、
シェアトップはユピテル。(1月25日版 日経MJを参照)
年々、順調に販売台数を増やしています。

10年前の市場予測はほぼ正確でした。

なのに、この電子機器メーカはどこで間違えたのでしょうか?
価格設定が高かったことや、
自動車業界に精通していなかったことも
理由に挙げられます。

一般の人向けではなく、業者向け専用にしたことも理由かもしれません。
発売時期が早すぎたことも理由の一つです。
海外メーカを含め競合が多いのも理由かもしれません。

私が商談の現場で直面したのは、メーカのブランド名が”無名”だったことでした。
パソコンの周辺機器の分野では、有名で信頼のブランドでしたが、
ドライブレコーダーでは全くの無名。
海外メーカかと聞かれることもありました。

結局、最後まで”無名”は解消されることなく、”無名”のまま、世の中から去ることになりました。

残念ながら、
”ドライブレコーダーと言えば、このメーカ”
というマーケティングに失敗しました。
パソコン周辺機器とドライブレコーダーが結びつかなかったのです。

結びつけられない商品分野を選んだことが
一番の敗因だったかもしれません。
将来市場規模が広がるという、甘い言葉に見せられて、
自社の強みを活かせなかったことが残念です。

このブランドは、現在もパソコンの分野で使用されていますが、
自社商品ではなく、他社にブランドを供給しています。
ブランドを作ることは一朝一夕にはできません。

ブランドが復活して、再び輝くことを願っています。

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