”リベート”と聞いたら、何を連想するでしょう?
”ワイロ”とか”裏金”とか、
「ちょっと、表には出せないお金」を想像するのではないでしょうか。
多くの人になじみのないリベートですが、
法人取引(BtoB)では、かなり普通に行われている取引の一つ。
もちろん、”違法”でもなければ、”脱税”でもありません。
例えば、私が働いていた会社では、
仕入れ先から、定期的にリベートが支払われていました。
仕入れ先から?
普通は仕入れ先に支払うのでは?
この場合、代理店の立場で説明すると、
電機メーカから、代金の一部を”リベート”という形で、
戻されていました。
商品とお金の流れを図にすると、こんな感じです。
代理店の立場で説明すると、
1,000円でメーカから仕入れて、。1,200円で最終ユーザに販売します。
この場合、代理店の利益は200円です(1,200ー1,000=200)
これに加え、メーカから代金の一部がリベートとして支払われます。
私が働いていたときは仕入金額の7%がリベートとして戻されていました。
1,000×7%=70円がリベートです。
これで、代理店の利益は200円+70円=270円となります。
これ以外にも、いろいろなリベートがありました。
1年間(もしくは半年間)の目標仕入れ額を設定し、
達成すれば、達成リベートが支払われました。
これは、全体の仕入れ額の数%。
数億円の仕入れ額の数%なので、数100万円です。
全体の仕入れ額以外に、機種別リベートというのもありました。
扱う商品がいくつかあり、その中で目標額に達すると、
数%リベートが出ました。
例えば
テレビは目標金額に達成したので、仕入れ額の2%がリベート
洗濯機は、目標に達しなかったので、リベートはなし
こんな感じです。
目標額は、前年度の会議で、メーカと代理店間で決められました。
通常は前年度の実績+数%で決められました。
リベートは目標金額にコミットメントするための”えさ”とも言えます。
技術リベートというものもありました。
商品知識について筆記試験を、代理店の営業マン向けに行います。
当時、試験科目は6科目。
A級とB級があって、B級に合格すると、次はA級という流れです。
全員が受験する必要はありませんが、
A級合格者の数によって、リベート率が変わっていたと思います。
代理店の営業マンたるもの、商品知識は身につけておけ、
と言う意味のリベートです。
他にも、戦略的に伸ばしたい商品には個別のリベート
競合他社の情報など、営業情報報告書の枚数とクオリティでのリベートなど、
いろいろなリベート制度がありました。
正確な数字は知りませんが、
おおよそ、仕入れ額の20%程度はリベートとして
メーカから戻ってきました。
事例では、200円の利益(利益率20%)で販売していますが、
実際、こんな高い利益率で販売することはほとんどなく、
粗利5%以下、もしくは仕入と販売が同じ金額(つーつーと呼んでいました)
で販売することも珍しくありませんでした。
それでも、リベートで粗利が出るので、
他社との競合など、金額勝負の時はこんなことをやっていました。
私が販売していたのは産業用電気製品。
一般的にはあまり知られていませんが、工場やビルなどではたくさん使われています。
市場規模も大きく、関連産業に携わる人も多いです。
大手電機メーカが同じような製品を作り、販売しています。
そうすると、メーカ間でのシェア争いが厳しくなります。
シェアを増やすにはどうするのがいいのか?
手っ取り早いのは、売り子を増やすこと。
シェアを増やすためには、売り子の数を増やして、人海戦術が一番オーソドックスな方法です。
とはいえ、大手電機メーカは人件費も高いし、
優秀な人材を売り子にまわすのも、もったいない。
と考えたのかはわかりませんが、
代理店に、リベートという手数料を払って、
売り子の数を増やしました。
その戦略が当たって、このメーカは産業用電気製品の分野では
ダントツのシェアトップです。
メーカとして、業績好調です。
リベートは、自動車の販売やビールなど、
シェア争いが厳しいところでは販売店との契約条件に入っています。
車業界はリベートがあるので、
実需以上に仕入を増やし、新古車として販売されています。
ANAやJALなどは、飛行機を買っているボーイングから
リベートを得ているようです。
(決算発表にも載っています)
リベートは商取引の一つとして一般的なものです。
ちなみに、私はこのリベート制度が嫌いでした。
リベートが利益の大半を占める以上、メーカの意向に反することはできません。
上司以下全員、メーカ側を向いて仕事をすることになります。
仕事も自分の意思と言うより、メーカの使いっ走りの仕事が大半を占めます。
仕事を辞めた大きな理由でした。
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